なぜ日本では「キャッシュレス」「無人」コンビニが難しいのか? ローソンに聞いた

少子高齢化社会を迎えた現在。今までは是とされていたビジネスモデルも、手法を切り替えなくては立ちゆかなくなるかもしれない。その1つがコンビニだ。

ファミリーマートは1973年に狭山店(現 入曽店)を、セブンイレブンは1974年に豊洲店を、そしてローソンは1975年に桜塚店を、それぞれ1号店としてオープン。当初はセブンイレブンの名前の由来にもなっているように「朝7時~夜11時までと、各チェーンとも営業時間が決まっていた。しかし、よりコンビニエンス(便利)にするべく、70年代後半には24時間営業を行う店舗が増加。80年代に入ると全国各地に店舗が生まれ、学生のアルバイト先としても人気を誇った。

しかし、現在は少子化が著しく、各地のコンビニは労働力の確保に頭を悩ませている。そのような状況下で、2016年に1つのニュースが伝わってきた。中国・上海に無人コンビニが誕生したというのだ。

電子マネー社会が後押しする中国の無人コンビニ

上海の大型スーパー「Auchan」の駐車場内に作られた、無人コンビニ「BingoBox」。現在は閉店

そのような状況下で、2016年に1つのニュースが伝わってきた。中国・上海に無人コンビニが誕生したという。筆者も2017年7月に同店を見学してきた。

専用アプリでIDを認証させると入店可能となり、RFIDタグ(※無線電子タグ。FeliCaや社員証などの非接触型ICカードと同様の技術を用いて、情報を埋め込んだもの)がつけられた商品の価格を無人レジが計算。中国で広く普及するモバイル決済サービス「WeChatPay」などで支払う、という流れだった。

誰が入店しているかは常にオンラインでチェックしており、未決済の商品があると退店できない。また、他のユーザーのIDでなりすまし入店したとしても、店内に設置されたさまざまなセンサーで入店者をチェック。IDと一致しない場合はアラームを鳴らしたり、本人のIDを特定した場合はWeChatPayのアカウントに警告文を発したりする。電子マネーが広く普及し、モバイル決済が盛んな中国だからこそ成り立つものだと感じた。

その後、見学した店舗には行政指導が入り、残念ながら現在は閉店してしまったものの、中国ではほかにも多くの無人コンビニが稼働している。

もちろん、いくら無人と言えど、清掃や陳列棚への商品補充などは人力だ。しかし、レジを無人化できるだけでも、より少ない労働力で運営ができるのではないだろうか。少子高齢化で働き手が少なくなっていく日本でも、有効な手段だと思われる。

接客はITにおまかせ! ローソンが目指すの次世代コンビニ

ユーザーとその人が手に取った商品を、陳列棚の上部にある3Dカメラが検出。すると、Pepperが商品のプレゼンテーションを行うシステム

そんなレジの無人化を、日本でも積極的に進めようとしているのがローソンだ。2016年12月にはパナソニックとともに、買い物カゴに入った商品を自動で検出し、支払い金額を算出して袋詰めまでしてくれる「レジロボ」 を開発。2017年7月にはスマートフォンアプリを使ったセルフレジを上海の店舗に導入した。

そして現在、次世代店舗の実験施設として同社が東京都内に構える「オープンイノベーションセンター」では、今までに開発したシステムも含めた、複数の無人レジシステムの実証実験を行っている。

ゲート型のキャッシュレスレジ

まずは、完全なキャッシュレスレジを実現する、ゲート型の無人コンビニシステムから紹介しよう。商品を手に持ったまま、または買い物袋の中に入れたままゲートを通過すると、自動的に合計金額を算出。交通系電子マネーまたはLINE Payなどで決済が行われるシステムだ。

各商品にはRFIDタグが貼り付けられている。レジ代わりとなるゲートは、このRFIDのデータをスキャンして購入品をチェックする。

同施設のセンター長兼経営戦略本部の副本部長である白石卓也さん曰く、RFIDタグのコストは下がってきており、現在は10円近くになっている。

また経済産業省もコンビニの電子タグ導入に関しては積極的で、2025年までにコンビニ各社の取扱商品すべて(推計1000億品/年)に電子タグを導入する計画を進めている。製造数が増えれば、さらなるコストダウンが期待できる。より低コストな印刷型の電子タグの開発も進んでいる。

電子タグ導入のメリットは無人決済だけではない。クラウド側には商品名や価格、製造日、製造ロット、賞味期限、仕入れ情報といった情報も記録されており、電子決済による顧客情報と紐づければ、どの製品をどの顧客に販売したかのデータも蓄積できる。

「たとえば、メーカーから特定の商品に異物が入った可能性がある、という通達が来たとしましょう。このとき、どのロット(最小生産・出荷単位)に問題があるのかわかるのに、どのタイミングでどのロットの商品が販売されたかの追跡が難しく、従来は全商品を回収していました。しかし電子決済とRFIDタグを使えば、該当ロットの商品だけを回収することができますし、その商品の購入履歴の確認も可能になります」(白石さん)

ほかにも、偽物商品の混入防止ができることや、どの商品がどの店舗に置いてあるのかリアルタイムで店頭在庫が把握できること、ユーザーに入荷情報を伝えられることなどのメリットも期待できるという。

重要視しているのは「無人化」ではなく「省力化」

ローソンストライプを身にまとったロボホン。陳列棚に並べられた商品の解説を行う

前述したように、商品補充などの業務を考えるとコンビニの完全無人化は難しい。しかし現状、十分な労働力を確保できず、24時間営業に危険信号のともる店舗が増えてきている。

そこで登場したのが、現状の労働力でもスマートな店舗運営を可能とするシステムだ。しかも深夜帯のレジを無人化することで、コストダウンしながらトータルでのサービス力を高める狙いがあると白石さんは明かす。

「深夜に働き手が集まりにくいという背景もありますが、人件費を減らすと共にサービスを強化するのが根本的な狙いです。店頭端末『Loppi』の操作方法を案内したり宅配便の受付をしたり、ホットスナックの調理をしたりと、スタッフにはいろいろな業務がありますが、レジ業務は人がやらなくてもいいのではないか、と。レジで待つのはお客様のストレスになりますし、それも改善することができると考えています」

RFIDタグ以外に、従来のバーコードを使ったセルフ決済システムもある。電子決済と連携する専用アプリを使ったものだ。

使い方は簡単だ。スマホにインストールした専用アプリでバーコードを読み取り、アプリを電子買い物カゴとして使う。

アプリ上で電子決済が完了すると、店舗側の確認用バーコードが表示される。それを備えつけの機器に読み取らせるだけ。

キャッシュレスを実現するためのハードル

お客さんの質問に答えるコンシェルジュの役割を果たすロボットも

未来のコンビニ経営において、電子マネーで電子決済するメリットは大きい。しかし、日本はまだ完全にはそちらへ舵を切れない状況にあると、白石さんは指摘する。

「日本は現金での決済インフラが整いすぎてしまいました。現金で支払うことにまったく不自由がないんですよ。日本で普及させるには国として何かしらの制度なり優遇措置なりが必要かもしれません。経済産業省と話をしているのですが、たとえばキャッシュレスでの決済で結果的に安く購入できる仕組みとか。官民が一緒になって推進していかねばらないと考えています」

日本は現金の信頼性が高い国。電子マネーを普及させるには、インフラが整うだけでは不十分で、キャッシュレスのメリットを打ち出し、ユーザーがついていく状況作りも大事だという。

「無人化やRFIDタグの普及って、キャッシュレス化と表裏一体なんですよ。そしてこれからはキャッシュレスな環境を使っていかないと、産業全体として生産性がなかなか上がりません。日本全体の生産性を高めていくために、RFIDタグを用いたキャッシュレス化を進めましょう、という話を経産省主催の会議では話をしています」

とはいえ、ローソンは現金で決済できるシステムも開発中だという。

ローソンがパナソニックと共同開発中の完全自動セルフレジ機レジロボ。専用のスマートバスケットに商品を入れる

「我が社では、85%のお客さまが現金で決済されています。もし現金がまったく使えないシステムを店舗に導入した場合、どれだけ受け入れられるかわかりません。まだキャッシュレスに決め打ちはできないので、複数のシステムを同時並行で検証しています」(白石さん)

以上のような背景から、ローソンは現金で決済できるレジロボも開発中だ。専用の買い物カゴに商品を入れると、レジカウンターに組み込まれたロボットがRFIDタグを読み取り、決済額を算出するものだ。2017年2月に実証実験を行ったが、2018年にも実証実験が予定されている。

クレジットカードおよび現金決裁が選べる。袋詰めの機構が必要なために場所はとるが、現金での利用者が多い地域でも活躍しそうな存在だ

「オープンイノベーションセンター」に備え付けられたレジロボは、現金またはクレジットカードでの決済が行えるものだった。さらに、決済後は袋詰めまで行ってくれる。

店内に設置された複数のセンサーが、全商品のRFIDタグの位置を検出。どの商品がどれだけ売れたかを可視化することで、商品補充のスケジュールが立てやすくなる

すでに技術的には、より無人化を進められるシステムや、さらなる未来を見据えたシステムも実現可能だ。しかし、ユーザーに受け入れられなければ意味がない。たとえば、IT企業のビル内にある小規模コンビニならば、スマート化を進めてもユーザーは受け入れてくれるだろうが、そのケースをすべての決済システムの基準とするのは難しい。全国津々浦々に店舗を持つコンビニチェーンだからこそ、単なるプロダクトアウトではなく、シチュエーションごとに異なるユーザーの目線が重要なのだろう。

白石さんは、こう語る。「キャッシュレス化で、お客さまにどれだけのメリットがあるかを考えなくてはなりません。繁華街と地方では求められているものが違うかもしれない。立地や店舗の客層によっても、やり方が変わってくる。画一的にはいきません。各店舗の性質とテクノロジーを合わせて導入していくのが大事だと考えています」

 

編集:ノオト