仮想通貨だけじゃない! 食品・医療・著作権管理にも広がるブロックチェーン応用サービス10選

テレビや新聞、インターネットなど、今やあらゆるメディアで取り上げられるようになった「ビットコイン」。一部の投資家だけでなく、価格の乱高下ぶりからも一般の人からも注目を浴びている仮想通貨だ。この新しい概念は、私たちの知っている「通貨」というものを、一変させる可能性がある。従来の通貨は、国が認める機関(日本銀行)が発行元であることや、取引も第三者機関(VISAやPayPalなど)を通す必要があった。一方、ビットコインは、価値を保証する権威を通すことなく、ユーザ同士が直接取引することが可能なのだ。

ビットコインをはじめとする仮想通貨は、ある技術によって支えられている。それが「ブロックチェーン」だ。ブロックチェーンは仮想通貨の取引以外の分野でも徐々に広がりを見せている。そこで今回は、食料品や医療、知的財産などの分野でブロックチェーンを活用している国内外のサービスを挙げ、今後私たちの暮らしを変えるであろうサービスをご紹介しよう。

そもそもブロックチェーンとは何か?

ブロックチェーンは取引データ(トランザクション)を「ブロック」という台帳の一部に記録し、ブロック同士を鎖(チェーン)のようにつないで大きな台帳を作る。これを「分散型ネットワークシステム」という。

仮想通貨を例に、この仕組みを説明すると、台帳が確かであれば、価値を保証する権威(日本銀行や第三者機関)を通す必要がなくなり、ユーザー同士の直接取引が可能だと考える人たちがいる。

この技術の大きな特徴は「改ざんに強い」ことと「記録したデータの消滅リスクが低い」ことの2つ。それぞれの理由を説明しよう。

特徴1. 改ざんに強い

台帳の各ブロックには、暗号化したデータ(ハッシュ値)が取引データ(トランザクション)と共に記録されている。もし、ブロック内容を改変すると、これに紐づくハッシュ値が変わってしまうので「過去に記録されたデータと違う」と判断できるのだ。

ブロック同士は時系列でつながっており、過去の取引履歴はすべて公開され、世界中のコンピューターから閲覧可能。つまり、正しく取引されているかを、常にユーザーがチェックできる。

特徴2. 記録したデータの消滅リスクが低い

ブロックチェーンは世界中のコンピューターをつないで動く仕組みだ。大まかに説明すれば、世界中のコンピューターがデータとパワーを少しずつ持ち寄って、取引情報を保存するのだ。そのため、中央システムだけでデータを管理するより、ハッキングされたり物理的に破壊(天災など)されたりするリスクが非常に低い。

これら2つの特徴に加え、特定の条件で取引を自動的に実行する「スマートコントラクト」機能や、多人数同士の取引を実現する「ライトニングネットワーク」といった技術を組み合わせることにより、多くの人がより簡単に取引に参加できるようになった。

「過去の取引内容をすべて記録し、ネットワーク上でその内容を追える」ブロックチェーン技術は、仮想通貨だけでなくさまざまな分野で応用されつつある。

食品流通

食品の流通、たとえば産地偽装は国内外で問題になっている。この問題を解決するために、産地や介入業者、流通経路の追跡(トレーサビリティー)への関心が高まっている。レストランや食卓に並ぶ食材が、どこで生産され、どんな流通経路をたどったか。正確な情報を消費者がすぐ確認できるようになれば、食に対する安心感が増すはずだ。

そんな食品の追跡記録に、ブロックチェーンを活用するサービスが増えている。ブロックチェーンの特徴の一つである「改ざんへの強さ」がデータの信頼に結びつくからだ。従来のデータベースを作るシステムと比べ、機器のコストが下がって安価に導入できる点も、普及に一役買っている。

ここでは、実際にブロックチェーンを使った国内外の4つの食品サービスをご紹介する。

高級ワインの偽造品流通を防ぐ【国内】

  • ブロックチェーンの技術元:SAP Leonardo
  • サービス提供:EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング

「年間1億〜5億ドルの偽造品が流通している」ともいわれるワイン。製造元から消費者に届くまでに、複数の業者が仲介するので、偽造品が紛れ込む可能性が高い。

「ワイン・ブロックチェーン」は、ぶどう農家、醸造家、倉庫といった業者が登録した情報を、消費者が入手できるシステム。ボトルに貼られたラベルのQRコードを読み取ることで、消費者は収穫地や温度管理、配送などに関する情報をスマートフォンで確認できる。

QRコードでの情報公開は10数年前より行われているが、ブロックチェーンで情報の信頼性を消費者やバイヤーにアピールできる点が新しい。

偽造品防止だけでなく、消費者の目が流通過程まで届くことで管理の質が向上し、ワインの劣化を防ぐ効果も期待されている。2017年より日本でもサービス開始。

ジビエ肉の安全性を担保する【国内】

  • ブロックチェーンの技術元:テックビューロ株式会社(mijin)
  • サービス提供元:般社団法人日本ジビエ振興協会

シカ、イノシシ、野ウサギ、山鳩(ヤマバト)、カルガモ、カラスといった野生の鳥獣を使った「ジビエ料理」。しかし、野生鳥獣には寄生虫やE型肝炎炎ウィルスなどの感染症リスクがあるため、家畜以上に安全性を追求しなければならない。

一般社団法人日本ジビエ振興協会は2017年10月よりブロックチェーン「mijin(ミジン)」の実証実験を実施。2018年1月からは実運用に入った。加工される場所から消費されるまで、日付、管理者、経由地、数量など各ジビエ食肉に関するデータを記録。企業間取引サイトと「ジビエ個体管理システム」から、仕入れを行う各業者や飲食店がシステム上で情報を閲覧できるので、品質の担保も可能になる。

有機農産物を品質担保・確認する【国内】

  • ブロックチェーンの技術元:シビラ、ガードタイム
  • サービス提供元:株式会社電通国際情報サービス、宮崎県東諸県郡綾町

有機農産物も、ブロックチェーンが活用されつつある分野。「有機農産物」という言葉には安全なイメージがあるが、世の中には「有機」「無農薬野菜」「オーガニック」といった、似たような名称で売られている農産物が数多く存在する。本当に安全なのか、何を信じればいいかわかりにくいと感じる人もいるのではないだろうか。

そもそも「有機食品」とは、農林水産省にて制定された「有機JAS規格」に適合した生産条件のもとで作られ、登録認定機関に認められた農産物と農産物加工食品を指す。このような“権威”によって価値を保証されるモデルは、仮想通貨と同様にブロックチェーンで解決することが可能だと考えられている。

株式会社電通国際情報サービスは、宮崎県東諸県(ひがしもろかた)郡綾町と連携して、有機農産物の品質保証テストを2016年10月から続けている。

綾町から出荷された野菜の包装についているQRコードを読み取ると、どういった土地で誰に生産され、どのような流通経路をたどって手元に来たのかがわかる。ブロックチェーンで各情報をデータベースに記録しているため、有機農産物なのかそうでないのかがしっかりと裏付けられる。

魚の産地偽装を防ぐ【海外】

  • ブロックチェーンの技術元:Viant
  • サービス提供元:WWF(公益財団法人 世界自然保護基金)

Viant社は、ブロックチェーンに魚の漁獲場所、生産・加工場所、流通経路を記録し、追跡できるシステムを開発。たとえば魚の流通の追跡では、取引記録から安全と認められた魚にQRコードをつけ、消費者はコードをスキャンすると魚に関する情報が見られる。

医療

病院間で過去の診察・処方記録を共有する【国内】

  • ブロックチェーンの技術元:イーサリアムブロックチェーン
  • サービス提供元:メディカルチェーン

「メディカルチェーン」は医師、病院、研究室、薬局、保険会社など、医療に関わるあらゆる機関が同じ情報を共有し、患者により正確な医療の提供を目指している。

現在のシステムでは、A病院に通って薬を処方されたものの調子が良くならず、別のB病院へ通うことにした場合、一から診察や治療を受けければならない。患者の負担が大きくなるだけでなく、B病院でも新たにカルテを作り直す手間が発生してしまうのだ。

メディカルチェーンを使うと過去の診察・処方記録が共有されるため、患者と医師、それぞれ負担を減らすことができる。

調剤薬局のデッドストックを解消する【国内】

  • ブロックチェーンの技術元:IBM Cloud
  • サービス提供元:BHIP(ブロックチェーン北海道イノベーションプログラム)、株式会社ファーストブレス

2016年に医薬品医療機器法が改正されたことで、調剤薬局間の医薬品の譲受・譲渡が新しい市場として開放された。調剤薬局の約85%(約 4万3500 店舗)は、個人経営の薬局。システム化による取引の手軽さへ期待がかかる一方、出所不明の薬に対する見知らぬ者同士の取引になることへの不安の声も上がっている。

この不安を解決すると注目されているのが、「ブロックチェーン北海道イノベーションプログラム(BHIP)」と株式会社ファーストブレスが検証を進めているサービスだ。ブロックチェーン上に取引情報を記録することで、トレーサビリティーを実現。2017年時点で実証実験のPhase2を終了。以降の計画は発表待ちだ。

新薬の治験をスムーズにする【海外】

  • ブロックチェーンの技術元:不明
  • サービス提供元:Pfizer、Amgen、Sanofi

大手製薬会社のPfizer(ファイザー)、Amgen(アムジェン)、Sanofi(サノフィ)の3社が、新薬の治験をスピーディーに進めるべく、プロジェクトを立ち上げた。このプロジェクトにブロックチェーンが使われ、被験者探しをスムーズにしている。

被験者データは各製薬会社のシステムに記録されてきたものの、データに互換性がないため、他社とは共有できなかった。そこで、被験者データをブロックチェーンで記録することで、3社分のデータが共有され、条件を満たす被験者とスムーズにコンタクトがとれるようになる。

従来の被験者探しにかかった費用を抑えることができるため、最終的には薬の価格を引き下げることにつながる。さらに、患者側にも最新の治療を受けるため、あるいは治療費を抑えるために新薬の治験に参加したいニーズがある。こういった患者側の希望に応える効果も期待される。

小売

ポイントサービスを共通化する【国内】

  • ブロックチェーンの技術元:mijin
  • サービス提供元:日立ソリューションズ

コンビニAではこのポイント、コンビニBではこのポイント、クレジットカードCではこのポイント……というように、私たちの生活に密接している各社のポイントサービス。現在では1つのポイントカードを複数の店舗やECサイト、ウェブサービスで使うことができるようになり、通貨に近い使い方の実現が進んでいる。このような活用法に経済産業省も着目。今後の市場化に向けたシステムの構築に期待がかかっている。

日立ソリューションズでは、ポイント管理にブロックロックチェーンを活用することで、偽造や改ざんの防止、ブロックチェーンを支えるPCを複数の拠点に分散することでBC/DR(事業継続/災害復旧)対策の信頼性を向上、さらにシステム構築・運用コストの低減につなげられると期待している。2017年2月より検証を開始。

著作権

著作権の帰属を主張する【海外】

  • ブロックチェーンの技術元:OP_RETURN
  • サービス提供元:Binded、ascribe、KODAKOne

ブロックチェーンは、著作権の保護にも活用されつつある。著作権自体は、著作物の創作時点で発生するが、法的拘束力を与えるためには、必要な機関に届け出を行わなければならない。たとえば日本だと、文化庁へ届けを出す。クリエイターにとっては、この手続きや手数料の支払いが煩雑だった。しかも、仮に法廷で著作権侵害を争うことになれば、非常に多くの時間とお金がかかる。

ブロックチェーンを活用したサービスが、こうした問題を解決することが期待されている。Blockai、ascribeといったブロックチェーン活用サービスに作品を登録しておけば、利用履歴を残せる。つまり、少なくとも、その作品が履歴にあるタイムスタンプの時間に存在していたことが証明できるのだ。

宝石の流通

ダイヤモンド取引をより安全にする【海外】

  • ブロックチェーンの技術元:Kynetix、Everledger
  • サービス提供元:SDiX

個体ごとに品質や性質が大きく異なるダイヤモンドは、一般的に市場取引で使われる「競り売り」や「入札」には向かず、売り手と買い手の間で価格を決める「相対取引」で取引されることが多い。そのため、新規参入者は価値基準と価格の相場を事前に学ばなければならず、なかなか参入が難しい。

このように、市場環境が閉鎖的で成長も頭打ちといわれていたダイヤモンド業界だが、2015年にダイヤモンド現物取引を専門とする電子取引所「SDiX」が誕生。今後、ダイヤモンドの鑑定証、取引履歴、介入業者といった情報がブロックチェーンに蓄積され、閲覧できる環境が整っていくと、偽造や詐欺を防止できる。将来的には、知識が少ない新規参入者でもデータを見れば価値判断ができるようにし、個人投資家といった新しい顧客を開拓して、市場を活性化することを目指している。

まとめ

ブロックチェーンを活用すれば、見知らぬ者同士のやりとりでも、取引の信頼性を担保することができる。商取引や流通をはじめ、著作権などのさまざまな分野での応用が期待されている技術なのだ。ブロックチェーンがより活用され、新たなウェブサービスが生まれることで、近い未来で情報の透明化やサービスの効率化がより進むだろう。

 

編集:ノオト